「裁判員の判断の心理」(伊東裕司著)

裁判での被害者陳述が、裁判員の判断に与える影響について考察した書籍。

被害者の陳述

被害者の陳述(victim statement of opinion、以下VSO)は、犯罪被害者の被害(物心両面で)については重要である。しかし、

(A)「被告人が有罪かどうか?」という観点では、被害者の陳述は情報がほとんど無い

裁判官であれば、(A)を十分承知の上で、有罪・無罪の判断をすることができるであろう。一方で、裁判員は、(A)を適切に考慮して有罪・無罪の判断を行うことが出来るのか?この点を実験を行って考察している。

3つの実験

実験は3つ行われた。

  1. VSO有り・無しの2パターン、死体写真有り・無しの2パターン、2x2=4条件での有罪・無罪の判断率の有意差判定。(写真は実際には特殊メイク)
  2. 一般的な説示(裁判員に関する法律の説明)、限定的な説示(被害者陳述は有罪無罪の判断には用いてはならない)について、それぞれ有り・無しの2x2=4条件での有罪・無罪の判断率の有意差判定(両方有りの場合は、一般→限定の順)。VSOは全員に提示。
  3. 説示を受ける、説明を要求する、統制群(説示も説明も無し)の3パターン、VSO有り・無しの2パターン、3x2=6条件での有罪・無罪の判断率の有意差判定。

考えたこと : 冤罪リスク

私は現時点では裁判員には選ばれていないので、実際の裁判については分かりません。この本を読む限りは、無罪判決を受けたかもしれない人が有罪判決になるリスクは少なからずあるのではないか、と思いました。

(VSOに限らず)有罪無罪に関連しない内容については、裁判員に提示しない、というルールで運用したほうが、少なくとも有罪・無罪の判断については確実性が高くなるように思いました。

現在・未来の裁判官に読んで欲しい

心理学を学んでいる身からすると、本書の内容は、ショッキングなものではなく、むしろ、人間の思考パターンからすれば、そうなりそうだな、というものだと思われます。しかし、心理学を全く知らない人からすると、驚きのある内容に思います。

なので、裁判官の方、裁判官を目指している方、に特に読んでもらいたいな、と思います。